京都の喧騒から離れ、自然豊かな京都を満喫できる京都市北区の鷹峯は、ゆったりと社寺を巡ることができる場所です。
癒しを求めている方、観光や賑わいとは違った雰囲気の京都を味わいたい方におススメのスポットです。
そんな鷹峯の中でも有名な「源光庵」のすぐ近くに、吉野太夫ゆかりの寺「常照寺」があります。
今回は、京都市北区の鷹峯（たかがみね）にある常照寺をご紹介します。
寂光山常照寺（じゃっこうざんじょうしょうじ）
江戸時代初期に本阿弥光悦が移り住んだ地が鷹ヶ峰です。
そんな鷹ヶ峰の地にある「寂光山常照寺（じゃっこうざんじょうしょうじ）」は、元和2年（1616年）に本阿弥光悦から土地の寄進を受け、光悦の子である光瑳の発願によって、身延山久遠寺第21世の寂照院日乾を招き開創された日蓮宗の寺院です。
日乾は、境内に僧侶の養成機関や学問所などを創設し、その最盛期には30余りの堂宇が建ち並び、数百人の学僧たちが修行に勤しんだのだそうです。
吉野太夫ゆかりの「吉野の寺」
常照寺は、吉野の寺とも呼ばれています。
日乾に帰依し、「天下随一の太夫」と謳われていた二代目吉野太夫が、朱塗りの三門を寄進したことからこう呼ばれるようになりました。
二代目吉野太夫は、十四歳で太夫となった「寛永三名妓」の一人といわれる人物です。
容姿が美しいのはもちろんのこと、和歌や俳諧、書、茶道に琴、琵琶、香道、華道などなど、諸芸に秀でていた吉野太夫は、全盛期には井原西鶴の「好色一代男」に前代希代の遊女と記されるほどで、その美しさは遠く中国まで伝わっていたと言います。
26歳の時に豪商の灰屋紹益（はいやじょうえき）に身受けされ、その後38歳という若さでこの世を去り、遺言によって常照寺本堂裏の墓地に葬られました。
常照寺（じょうしょうじ）境内へ
青々とした美しい紅葉が、両脇に参道を覆うように並んでいます。
鮮やかな朱塗りの山門に迎えられます。
この山門は「吉野門」と呼ばれ、天下の名妓・吉野太夫が日乾上人に帰依し、23歳の時に寄進したものと言われています。
青もみじの時期は、参道の緑に朱色の門が映えて美しい光景を目にすることができます。
山門を入ってすぐ右手には「帯塚」があります。
帯状をした塚石は、四国の吉野川から運び込まれた自然石で作られています。
本堂です。
本堂の左手には、子供を殺して食べる悪鬼が仏の教えによって改心し、子育てや子授け、また信仰する者を守る神様となったと伝わる「鬼子母尊神」を祀る「鬼子母尊神堂（きしぼそんじんどう）」があります。
本堂裏手にある、吉野太夫ゆかりの茶室「遺芳庵（いほうあん）」があり、この茶室には「吉野窓」と呼ばれる壁一面の大円窓があります。
吉野窓は、窓の下部分が少し切り取られて、完全な丸い形ではありません。
完全な円は、仏教では「完成した悟りの姿」を現し、吉野窓は完全ではないことから、吉野太夫はこの窓に完全ではない自分の姿を映し、自らを戒めていたのだと言います。
