神社を訪れたとき、最初に目に入るのが「鳥居」。
くぐることで神聖な空間に足を踏み入れる、そんな象徴的な存在ですが——。
「なぜ鳥居は赤いの?」 「同じ鳥居でも色や形が違うのはなぜ?」そんな素朴な疑問を抱いたことはありませんか?
実は、鳥居の色や形、そしてそもそもの「起源」にも、ちゃんとした意味や信仰の背景があるんです。
この記事では、
- 鳥居はなぜ赤いのか?
- 鳥居の色にはどんな種類があるのか?
- 鳥居の形はどう違うのか?
といった疑問に、わかりやすくお答えします。
知れば知るほど、次の神社めぐりがきっともっと楽しくなりますよ。
鳥居とは?神社の入り口にある“意味”
鳥居とは、「神様の領域(神域)と人間の世界(俗世)を分ける“境界”」のような存在です。
神社に入るときに最初にくぐる鳥居は、「ここから先は神聖な空間ですよ」というサインでもあります。
つまり、鳥居は神社参拝の“はじまりの儀式”。 鳥居をくぐることで、私たちの心や意識が切り替わり、日常から離れて神様と向き合う心構えが整うのです。
なぜ鳥居は赤い?朱色に込められた力と歴史
鳥居といえば“赤”——そんなイメージを持つ人は多いはず。
実はこの「赤色(朱色)」には、古くから以下のような意味と理由があります。
◆魔除け・厄除けの力:赤色は邪気や悪霊を払い、災いを防ぐ色とされてきた
◆神様の力を高める色:朱色は太陽や火のエネルギーを象徴し、神様の力を強くすると信じらていた
◆防腐剤としての効果:朱色に使われる“丹(に)”という顔料には水銀が含まれ、防腐・防虫に優れていたため、木製の鳥居を長持ちさせる目的もあった
◆神仏習合の影響:仏教の影響が広まった平安〜江戸時代に、朱色の建築様式が一般化。神社もその影響を受けて朱色の鳥居が広がった
これらの理由が重なり、「鳥居=赤」というイメージが日本中に定着していったのです。
赤い鳥居が主流になったのはいつ?
「鳥居=赤」というイメージではありますが、もともと鳥居は、白木や自然な木のままの姿が主流でした。
赤い鳥居が一般化した背景には、時代ごとの信仰や実用性の変化があります。
◆鳥居の色の変化◆
・奈良時代〜平安時代初期: 白木が中心で、朱色は一部の建築や寺院装飾に限定されていました。
・平安時代中期〜: 神仏習合が進み、仏教建築の影響で朱色の建築様式が神社にも取り入れられ始めました。
・室町〜江戸時代: 水銀を含む丹(に)の防腐効果が評価され、木製鳥居に朱色を塗る習慣が広まりました。
「朱色の鳥居」が全国的に広まったのは、神仏習合が深まった平安時代以降。
そして実用性(防腐)と装飾性の両面から、江戸時代に入って一気にスタンダードになったと考えられます。
鳥居は赤だけじゃない!色の種類と意味
鳥居と言われてイメージするのは「赤い鳥居」かもしれませんが、よく考えると、色んな色や種類の鳥居があることを思い浮かべると思います。
その通り、鳥居の色には地域や信仰、神社の由緒などによって、さまざまなバリエーションがあります。
ここでは代表的な“赤以外の鳥居”をご紹介します。
白木の鳥居(例:伊勢神宮・出雲大社)
木を塗装せず、そのままの白木で立てられた鳥居。
純粋・清浄・神聖さを象徴し、伊勢神宮や出雲大社といった最も古式ゆかしい神社に見られます。
黒木の鳥居(例:野宮神社・京都)
木の皮を剥がさず、自然のままの黒い色合いが特徴。
素朴で原始的な印象を与える鳥居です。
▼野宮神社について詳しくはこちら


金色の鳥居(例:金神社・御金神社・東明八幡神社)
商売繁盛や金運アップの象徴として金色に塗られた鳥居。
その派手さもあり、近年は観光スポットとしても注目を集めています。
▼御金神社について詳しくはこちら


青い鳥居(例:港神社・速開都比売神社)
水の神を祀る神社に見られる青い鳥居。
船底用塗料を再利用したなどの歴史もあり、独特な雰囲気を醸し出します。
鳥居の色には、神社ごとの“祈り”や“信仰の表現”が込められているんですね。
鳥居の起源とは?神話と建築から見る“神聖な門”のはじまり
神社の入口に立つ「鳥居」。
当たり前のように存在するこの構造物には、いったいどんな由来があるのでしょうか?
実は、鳥居の起源にはいくつかの説があり、神話に基づくものや建築的な進化、海外からの影響説まで、さまざまな考え方が存在します。
ここでは、日本人の信仰とともに発展してきた“鳥居のはじまり”を、わかりやすく解説します。
神話起源説|「天岩戸」と“鳥の居る木”
最もよく知られているのが、『古事記』に記された神話「天岩戸(あまのいわと)伝説」に由来する説です。
この神話では、太陽神・天照大神(あまてらすおおみかみ)が弟の乱暴を憂いて天岩戸に隠れ、世界が真っ暗になります。そこで八百万の神々が協議し、岩戸の前でにぎやかな宴を開いて天照大神を誘い出そうとします。
このとき、「常世の長鳴鳥(とこよのながなきどり)」という鶏を岩戸の前で鳴かせ、その鳥が止まっていた木が“鳥の居る木”=鳥居になったという伝承があります。
この説によれば、鳥居には次のような役割が込められています。
神の世界と人間の世界を分ける「結界」
神様を招き入れるための“門”
神域への入り口であり、祈りの場の始まり
冠木門(かぶきもん)起源説|日本古来の構造物からの発展
建築史の観点では、鳥居は「冠木門(かぶきもん)」と呼ばれる、古代の簡素な門構造がルーツという説もあります。
縄文時代の遺跡にも、木の柱を立てて「聖なる領域」と「外界」を区切る構造物が見られ、神域を示すために自然に発生したと考えられています。
鳥居の基本構造である「2本の柱+横木」は、世界中の“門”にも共通するシンプルで普遍的なかたちです。
海外起源説|インドや中国の影響?
もう一つの説として、海外の建築文化からの影響を挙げるものもあります。
- インド仏教の「トラーナ」
- 中国の「牌楼(ぱいろう)」
これらは、いずれも聖域への門として使われており、形状が鳥居に似ていることから、日本に仏教や外来文化が入ってきた時期に、形態的な影響を受けた可能性があると考えられています。
その他の説と語源のバリエーション
語源に関する別説もあります。「鳥が止まる木」以外にも、「通り入る(とおりいる)」や「通い入る(かよいいる)」といった語源の説です。これは、“神様が通ってくる場所”としての意味合いです。
ユダヤ文化起源説(日ユ同祖論)は、祭壇構造や風習の類似性から、ユダヤ起源とする説です。ただし、これはあくまで民間伝承レベルで、学術的な裏付けは薄いとされています。
鳥居の起源については、いまだ明確な答えはありません。しかし、どの説にも共通するのは「神と人とをつなぐ入り口」であるという考え方です。
神社を訪れるとき、鳥居をくぐるという行為は、私たちが“日常”から“神聖な世界”へと一歩踏み込む象徴。その始まりにどんな物語があるのかを知ることで、いつもの参拝もきっと違って感じられるはずです。
鳥居の“形”にも意味がある!代表的な種類と特徴
鳥居は形にもいくつかの種類があり、それぞれに意味や由来があります。
鳥居の種類は、大きく「神明鳥居」と「明神鳥居」の2種類に分けられ、さらに細分化すると60種類以上あるとされています。
ここでは代表的な鳥居の形を紹介します。
明神鳥居(みょうじんとりい)


神明鳥居(しんめいとりい)


神明鳥居は、鳥居の中で最もシンプルな形状を持つ鳥居の一種です。
二本の円柱の上に円柱状の笠木をのせ、その下に貫を入れた直線的な形状で、笠木は丸く反らずに一直線になっています。
神明鳥居は、その名の通り神明系の神社に多く見られ、古代信仰の流れを汲んでいるとされて、伊勢神宮や出雲大社など、格式の高い神社でよく見られる鳥居の形式です。
例:伊勢神宮、出雲大社
両部鳥居・八幡鳥居・春日鳥居など
珍しい鳥居の例
- 三輪鳥居(奈良・大神神社)
- 合掌鳥居(岐阜・白川郷)
- 額束(がくづか)付き鳥居 など
京都の「蚕ノ社」では、非常に珍しい「三柱鳥居」が見られます。詳しく知りたい方はこちらの記事でご紹介しています!
形を知ることで、「この神社はどんな信仰があるのか?」が見えてくるのも鳥居の面白さです。
鳥居の色と形から神社の“個性”が見えてくる
神社を訪れるとき、鳥居の「色」と「形」に注目すると、その神社が大切にしているものや歴史的な背景が見えてきます。
- 赤い鳥居なら… 魔除けやエネルギー強めの神様
- 白木の鳥居なら… 清らかで古式ゆかしい神社
- 金の鳥居なら… 金運・観光・地域活性化系
など、それぞれの個性がわかるようになると、参拝がぐっと楽しくなりますよ。
まとめ|鳥居の色と形を知れば、神社めぐりがもっと面白くなる
鳥居は単なる“門”ではなく、そこに込められた色や形に、信仰と歴史が宿る神聖なシンボルです。
なぜ赤いのか?どうして白木なのか?形はなぜ違うのか?——
そんな小さな“気づき”が、神社めぐりをより深く、味わい深いものにしてくれるはず。
次に神社を訪れるときは、ぜひ鳥居にも注目してみてくださいね。